その瞬間、その短い、しかし永遠の時間は、私の人生はそれを中心に回っているように思えた。しかし、時間が経つにつれ、その瞬間の重みはエーテルに散逸し、やがてそれは完全に消え、跡には何も残らなかった。
その瞬間、私の初恋は、かつてあったけれども、もう二度とない何かの記憶として、私の中で死んでしまった。しおれて消えてしまったバラのように、苦い記憶だけが残った。
しかし、たとえ記憶が薄れても、その瞬間は私の心の奥底に常に存在し、美しくも悲劇的だった愛と、この世のすべてのものの無常さを痛切に思い出させるのである。